ぶらっと、旅る。 

   人生の半分を夏休みに捧げたいアラフォーバックパッカー・ナオキーズ!(The naokys!)  過去に辿った一人旅を焼き増ししたり、これから行くであろう冒険浪漫な旅路をドドドッと書き綴る狂い咲き旅日記

          ~  The naokys! presents  俺旅  ~

2015年04月

 『 インド道 フォーティーンス 』


 「 PISS OFF カルナータカ州の愚民ども 」  2009年8月9日~8月13日



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                何かの祭りの最中だった マイソールの一角


 ウーティを出発したバスはニルギリ山を越え、ムドゥマライ動物保護区という森の中を通り抜ける。

 ニルギリ登山鉄道車中にて、野生の象を目撃したラッキーな俺は今度はどんな動物達が車窓から拝めるのか?

 ここムドゥマライ動物保護区には、ベンガルトラやヒョウなんかが生息しているらしいし、もちろん象だっているのだ。

 カメラを抱えいつ動物達が飛び出してきてもシャッターを切れるよう身構え、臨戦態勢で心待ち。

 だがしかし、そうそう野生動物が見れる訳がねえんだよな。

 結局見れた動物達は猿・水牛・猪・鹿に数種の鳥くらいだ。

 インドの街中で見れる動物ばっかじゃねえか。

 しかも街ならこの他に牛や犬、猫、ヤギに豚にシマリスにインド人と、もっと数多くの動物達が生息してるぞ。

 がんばれ!ムドゥマライ動物保護区!!



 そこを抜けるとカルナータカ州に入った。

 ここからデカン高原の始まりだ。

 荒涼とした岩山が剥き出しになり、ごろっとした岩々が地表に露出している。

 低木だけになり多肉植物や棘のある乾木が道の脇を占め、芝生のような緑が広がる。

 雲は近くいかにも高原の雰囲気がある。 が、なにか貧乏臭い。

 いままでの南インドとは明らかに違う何かを感じる。

 畑にはやせ細った花の落ちたひまわりが頭を垂れ、か細い人参が畑一面に植えられてる。

 立派な角を持つタミル牛や野良犬は、あばら骨が顕わに目も虚ろ。

 最初に辿り着いた町のバススタンドでは、幾人もの乞食がまとわり付いてくる。


 こ、これじゃあ、まるでインドではないか!!!



 そう。 楽しかった南インドはもう来ない。

 旅の行程上、北へ向かっているので致し方ないが、次々と北インドの鬱陶しさが身に染みて近づいて来るのだ。


 そうして着いたのがカルナータカ州の一都市・マイソール。

 周りの貧乏村や痩せた土地の栄養分を全て吸い取った結果栄えた様な豪華なマハラジャタウン・マイソール。

 街の中心にはインド随一とも言われる豪華絢爛なマハラジャ・パレスがどんと控え、その周りに街が出来上がっていた。

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                    雑多な街並みが南インドの終焉を感じさせた


 このマハラジャパレスは今では博物館として内部見学が出来る。

 週末ということもあり、インド人観光客がわんさか。

 そして外見よりも果てしなく豪華な内部はまさにマハラジャの宮殿としてふさわしい。

 やはりマハラジャのおうちというならこうじゃなくっちゃだぜ!

 すべての物を手に入れ物欲の限りを尽くし贅沢三昧の暮らしっぷり。

 一度ならずは夢見る男のロマン、ハーレムinマハラジャ。

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                夜の宮殿は ビッカビカッ!!!


 そんな街中で一人の若いプッシャーが声をかけて来た。

 こういう奴はインドにはごまんといる。 インドに限らず、世界中にいるだろうがな。

 シカトするに限るウザイこやつはかなりしつこかった。

 何度シカトしようが、NOと言おうがずっと纏わり付いてきた・・・・


 「 分かったよ。 じゃあお前が働いてるそのコーヒーショップをみるだけだぞ! 」

 インドにアムステルダムのようなコーヒーショップなど存在する訳がないんだが、もしあるなら見てみたいもんだと思ったのが運の尽き。

 「 ほら、こっちだこっち。 」

 街のメイン・マーケットに入っていく。

 この街・マイソールは香料の産地として知られ、お香や香水、各種のオイルが特産なのだ。

 特にサンダルウッドはこの街の代名詞と言っても過言ではない。

 「 ほらこの粉がこれからお香になるんだよ。 こっちは天然のオイル、どれが好き? 」

 「 おい、お前。 俺は嘘つきが嫌いだ。 お前はコーヒーショップに案内すると言ったのに、なぜ名産品を薦める。 これ買ったらお前にマージンが入るだけだろう? じゃあな。 」

 と言って立ち去るもどこまでも付いてくる。

 「 どこまで行くんだ? 」

 「 俺はこれから美術館に行く所なんだよ、じゃあな。 」

 「 それならこっちだ! 着いて来いよ。 」

 「 いや、場所知ってるし。 お前はコーヒーショップに勝手に戻れ。 」

 「 コーヒーショップもこっちなんだ。 」


 ・・・・ぜってー違ぇ!!


 お前の嘘はもういいから俺を一人にしてくれ、と先へ進むといつの間にやら一人若いのが増えてる・・・・

 「 ハロー? ユー、ジャパニ? 」

 と言い、両手を俺の肩にかけ、こいつも一緒に何故だかついて来る。

 「 誰だ? お前。 おい、こいつはお前の友達か!? 」

 最初のプッシャーに尋ねる。

 「 いや、知らない。 ここらには後を着いて来て外国人を襲う奴が多いから注意しろ。 」

 そんな奴よりまずはお前に注意だよ。 しかもすげえ仲良く喋ってるしこいつら。

 「 ユー。 ユーウォントチャイ? 」

 「 いらねえよ。 飲みたかったら勝手に飲め。 俺にたかるな! 」

 もうすぐ美術館に到着する直前の事、

 「 おーい。 ここがコーヒーショップだ。 ちょっと寄ってけよ。 」


・・・・誰がどう見てもただのチャイ屋だ。


 それとも何か? このマイソールじゃチャイ屋の事をコーヒーショップって呼ぶのかい?

 いい加減しつこいんで2人についてチャイ屋に入っちまった。

 プッシャーが店の親父と親しそうに会話し、勝手にチャイを注文する。

 「 おい、俺はチャイは要らんぞ。 何も要らん。 」

 プッシャーがチャイを親父から受け取る。

 グラスに入ったチャイと空のグラスを2つ持ってる。

 その空のグラスに半分ほどチャイをいれ、俺に渡す。

 あれれ? この手口はもしや何か混入されてるってよくある話でないの?

 飲んだら睡眠薬効果で眠っちゃってケツの毛までむしられるんじゃねえの!?

 しかしこんな大通りのチャイ屋がグルでそこまでするか?

 一発でばれるじゃん。

 ていうか、俺チャイいらねーし。

 と思いつつ、手渡されたチャイに恐る恐る口をつけてみた。

 2口くらいすすってみると、プッシャー、チャイ屋の親父、レジの親父、後からついてきた奴とが、みんなで一斉に俺の方をガン見して、ちゃんと飲んでるか動向を伺ってるのが丸分かる。

 ゆっくりと、その一人一人と順番に目を合わせ、こっちも奴らの様子を伺ってやる。

 こりゃー、ぜってー入っとるね、何かしらの薬が。 チャイに…

 「 おい、俺はチャイいらねーんだからお前にやるよ。 飲め。 」

 と、後から付いてきた奴に渡してみると、そいつは手を引っ込めて大げさに首を振る。

 「 お前、さっきチャイ飲みたいって言ってたろ? やるから早く飲め。 」

 とそいつの顔の前にグラスを突き出すが半笑いの表情で受け取らない。

 埒が明かないので、グラスをその場に置き、無言でその場を立ち去り店を出た。



 「 おーい。 どうしたんだー? 美術館なら、ほらすぐそこだよ。 」

 美術館を目の前にしてまだしつこい。 まだついてくるか!

 そして美術館の敷地内にちょうど何か民族ダンスコンテストみたいなのをやってる会場があったのでそこに入り座席に座る。

 その隣にしつこい若いのが2人とも座る。

 「 お前らなぁ、しつこいんだよ。 嘘つきは嫌いだって言ったろ? 行け!! 」

 と、シートに座りシカトしてダンスコンテストを鑑賞しているが、実はものすごく心臓がバクバクしてきて今すぐにでも横になりたい気分になっていた。

 はっはぁ~、こいつらちょっとでも俺がさっきのチャイに口つけたもんだから様子を見に来たんだな?

 気分は睡眠薬というより麻酔薬みたいな感じで、眠くはならないけど体が重く、全く動かしたくない気分。 ただ座ってるだけでもすげぇキツくて、効いてないフリをするので精一杯・・・・

 たった2口すすっただけでこの効果。

 いったいどんだけ混入しやがったんだ?こいつら。

 だがこんくらいなら俺にとっちゃ物足りないくれーだ!

 しばらく押し問答してる内にようやく諦めたのか、効いてないと思ったのか奴らは帰って行った。

 完全に2人がいなくなったのを確認して全身の力を抜き、もう駄目だとシートにもたれかかった。


 その後、1時間程して効果が切れたのが分かったが、美術館と王宮観光してる間ふわふわしててめっちゃ気持ち良かったのは気のせいか。


 それにしても危ねえ街だぜ。 もっと気をつけなきゃだな。


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                 復活を遂げ 余裕のVサイン


 宿泊はバススタンド裏手の安宿に泊まったのだが、枕カヴァーの縫い目にぎっしりと南京虫が住みついてた。

 不思議と、やたら痒いが痕にはならず、しかもどこを刺されたのかもわからないので南京虫じゃないのかも知れないが、蚤でもダニでもない。

 が、ベッドバグには変わりがない。 見つけ次第殺しまくってたら白いシーツに赤い流線がいくつも付いた。

 ホテルの皆様、すいません。 いや、知ったことか!


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                 牛だって 観光したい!


 自分の浅はかさもあるが、マイソールはそんな訳で次の核実験候補地として推薦したいくらい嫌いになった。

 王宮の夜のイルミネーションも綺麗は綺麗だったが、ディズニーランドみたいで外見だけだな。

 この箱庭の中だけが世界の全てだと思ってんじゃねぇのか?

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                日が暮れはじめると 騎馬隊がやってきた

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                そこだけは すげえ綺麗・・・・

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                夢の国の 宮殿のようだよねん    
 


 しかし郊外にある村・ソームナートプルの、ケーシャバ寺院は物凄い見応えがあったよ。

 ホイサラ朝の建築物はどれもここまで細かい彫刻なのか?と驚きを隠せない石彫りの芸術作品だった。

 是非、ウチに持って帰りたい寺院のひとつだ。


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                こりゃもう 寺院自体が繊細な彫刻 



 しかしこの街はもういいやと、ITタウンとして名高い、バンガロールにさっさと移動した。

 最近話題の、頭の良いインド人はこの街から出た人間ばかりとのこと。

 どんな大都市で、どんだけ進んでいるのかと思ったが着いたバススタンド周りは下町で、ド汚いゴミ街でよくあるインドの街じゃあねえかよ。


 インドの街の大きさの基準として、ゴミの多さでその街がどのくらいの規模か測ることが出来る。

 初めて着く知らない街でも、だんだん道路や線路の脇にゴミが増えてきて匂いが鼻に衝く。

 それなのにいつまでもゴミ山が続き、なかなか街の中心が見えて来ないなと思ったら、そこはもう大都市だ。

 ゴミ山が自然発火してて焼けた匂いが充満してるならそれはもう充分大都市としての証だ。

 逆に村なんかはそこここにしかゴミがなく、ちょっと村を出ると極端にゴミが減るのだ。

 人の多さと街の大きさとゴミの量は比例しているのだ。

 で、この街はゴミタウンという最初の印象通りにド汚え大都市だった。


 どこの大都市もそうだが新市街だけは綺麗だ。

 道も綺麗だし、緑も多い。

 仕事には来るけど人が住む場所ではないからだろう。

 バスやオートリクシャを利用しないと街の移動が大変な大きさを誇る規模の街で、歩くのはつらい。

 しかもこれだけの交通量だと排気ガスがひどい。 結局汚いのか。

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                都会 知ってる店があるだけでもうそこは都会


 そんな新市街を歩いてると、4人組のガキが声をかけてきた。

 日本人は珍しいのか、よく声を掛けられたり、写真を撮られたり、いつの間にか携帯で写メられてたり、ムービーで盗撮されてたりとかする。

 だからまたか、と思ってたらこいつらはちょっと様子が違った。

 あきらかに調子に乗った小僧のからかい方だったのだ。


 「 おい、タバコ持ってる? ちょーだい。 」

 「 あっ、俺煙草吸わないんだ。 」

 「 あっそう。 その帽子いいな、ちょーだい。 」

 「 やだよ、自分で買え。 」

 「 そのサングラスいいな? ちょーだい。 」

 「 なんでだよ、自分で買え。 」

 というやり取りをしつつ歩いてると、大将格の小僧がジーンズの左ポケットをごそごそしはじめた。

 おっ?この小僧もしかしてナイフでも出すんじゃねえの?

 俺もついにナイフ強盗に襲われる日が来たか!!

 とちょい身構えようとすると、案の定すごんできた。

 「 なんでだ? じゃねえだろ。 こいつが目に入らねえのか? 」

 と、大将格は何の工夫もなくナイフを取り出し、折りたたみの刃を広げ目の前にちらつかせてきた。


 だが・・・・ 


 その広げたナイフの刃渡りのあまりの小ささに、初めてナイフ強盗に襲われた俺も無償にムカッ腹が立ってきた。

 刃渡りが小指ほどしかねえ・・・・

 なんだ? そのナイフ?? お前、人をナメんのもいい加減にしろよ!!

 仲間の前だからって調子に乗ってんじゃねえぞ。

 と、そいつのナイフを奪いに飛びかかると大将格は半歩後ろに飛びのいた。

 1分もしないうちに3人の仲間がそいつにナイフはやばいよ!と止めに入り、あっという間に大将格はナイフをしまう。

 しかも間髪入れず握手を求めてきた。

 「 どこの国から来た? そのサングラスはいくらだった? 」

 「 なんだお前は? 99ルピーだよ、自分で買え。 」

 「 どこで買ったんだ? 」

 「 コルカタだよ。 買いに行けよ、コルカタまで。 」

 「 分かったよ。 じゃあな! よし、行こうぜ。 」 

 と、仲間を引き連れその場から去ってった。


 こ、このひげも生えてねえクソガキが調子に乗りやっがって!!


 なんだ? このカルナータカって州は!?

 何がいち早く工業化に成功しただよ、なにが最近まで優秀なマハラジャがいただよ。

 クソ野郎とゴミしかねえじゃねえか。

 全くクソおもしろくねーとこだな、飯はまずいしよ。

 宿は汚ねぇーくせに高ぇーとこばっかだしよ。


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               シヴァよ 俺に広い心を与えておくれ

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                なんかこいつも 気に喰わなくなった   


 だれかこのカルナータカ州が好きだって奴がいたら教えてくれ、とりあえず殴るから。



 さっさと次の街に行こ、次。 んじゃね!



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                 来週も お楽しみにね!! チュチュッ!


                                               
                                                 From Naokys!



※2009年5月20日から2009年10月22日までの五カ月間にわたった抱腹絶倒な大天竺一周の旅、あの名作【 インド道 】シリーズがリメイクされ、ナオキーズ!旅ブログ 『 ぶらっと、旅る。 』にて蘇る。


  毎週木曜日配信中!!! 一遍たりとも見逃すな。



     
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 『 インド道  サーティーンス 』

  
   「 登山鉄道999 」  2009年8月6日~8月8日
 

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                 現役蒸気機関車:ニルギリ登山鉄道!!



 日本全国の鉄道オタクの鉄男&鉄子ーー!!

 お待たせ致しましたっ! 数ある鉄道オタクジャンルのなかでも希少価値であります、「インド登山鉄道マニア」の、ナオキーズ!参上。


 さあ今回は、ニルギリ登山鉄道に乗って参りましたー!


 こいつは 『 インド道 6th ダージリン・ハニー 』 のダージリン・ヒマラヤ鉄道と同じく2005年に世界遺産登録された歴史ある鉄道なのであります。

 メットゥパーラヤム駅からウーティ駅までの46kmを5時間20分もかけて走破。

 標高2300mの避暑地・ウーティを目指しました!!

 

 ケララ州コーチンを出発したバスは一路、タミルナードゥ州のコインバートルを目指す。

 そのコインバートルという街でバスを乗り換え、メットゥパーラヤムという町まで行き、そこで一泊し、朝7:10発の登山列車に乗るちゅー算段だ。

 まあうまく流れでトントン拍子に行けばの話だが。
 

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                   隣にド派手なトラック登場


 バスに揺られてコインバートルの街まで行く道すがら、前のバスの後方の看板にこんな宣伝が。
 

 「 JUMBO RUSSIAN CIRCUS 」 6/26~
 

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                   見つけちまったならしょうがねぇ

 なんと。

 サーカスですか。


 1日3回公演1pm  4pm  7pm。

 何より登山鉄道の運行状況がまったくわからず、早くメットゥパーラヤムの町に着き、駅に行って当日でもいきなり切符買って乗れるのか、はたまた早く予約しなきゃ乗れないのか、そこが知りたいのだ。

 のんきにサーカスなんか鑑賞してる暇などは、ないのだ。

 しかも時間的にもう午後の3時近く。

 午後4時の公演が観れなければこの街に1泊する事になり、次の日の朝早くに出発するであろうニルギリ登山鉄道に乗ることはまず不可能なのだ。

 つまり、サーカス観たら列車に間に合わないという事なのだ。

 そもそも今日は8月の6日(2009年当時)、6月26日から公演が始まっててまだやってんのか!? だ。
 

 そんなキワドイ選択が俺に許されようか・・・・

 しかし俺様はここ最近わがままに拍車がかかり、もう全部手に入れないと気が済まない性分になっちまっちまってる。


 だ ・ か ・ ら


 サーカス観て、暗くなろうが無理繰りバスでメットゥパーラヤムの駅まで行って、次の日も朝から列車に乗ってやろう。

 全部俺様の思い通りに実現させるのだぁ~!!

 
 旅の神様はそんな俺の事が大好きなようで、コインバートルのバススタンドに着いたのが15:20。

 そこでオートリキシャのオヤジに尋ねると、

 「 サーカスか! 任せろダンナ。 後ろに乗りな!! 」

 と、勢いよく飛び出した。

 
 サーカス大好きの会・会長の俺としては一度、インドのサーカスを観て見たいと常々思っていたのだ。

 シルク・ド・ソレイユなどには興味がなく、名も知らぬ場末のサーカス団に興味をそそられるのだ。

 それはストリップショーをメジャーな劇場に観に行くよりも、廃れたストリップ小屋を覗き見に行くのと同じ感覚だ。
 

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                   なんともチープさに心ウキウキ・ウォッチング♪

 会場はかなり大きい。

 大テントの周りには団員達のテントが所狭しと並んでる。

 その中には象や駱駝や馬などのアニマルも待機している。

 まさに50年代のアメリカのサーカス団の雰囲気。

 もうこりゃ入る前から抜群だぜ。

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                メインの象も 出し惜しみなしに入口に待機

 当然一番高価な、一番前のかぶりつきの席を買い求めた。

 海外ならでは出来る贅沢なのだ。

 日本じゃ一番前のスペシャルシートなんか何万円とかするだろうけど、ここインドのコインバートルのジャンボサーカスは、真ん中一番前の席がお値段驚きの300円。

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                  スペシャル最前列シートからの会場の様子

 それも客がほぼいない。

 300円のスペシャルシートは各ブロック一番前の席に数人座ってるだけだ。

 他の客は100円の後方大衆シートに陣取っている。

 それでも全席の3分の1しか観客がいないので一番後ろでも十分堪能することは出来るだろうな。

 
 わくわくはサーカスが始まってもわくわくしっぱなしだったよ。

 一番前の迫力はさすが300円。

 象が来ようがサイが来ようが犬が来ようが猫が来ようが安全のための柵やネットなど無し。

 アニマルがちょっとでも外に興味をしめそうものなら容赦なく動物使いの鞭がしなる。

 ロシアンサーカスとは名ばかりで、ロシア人は3人いただけ。

 他は東洋系の顔をした背の低いぽっちゃり系の女がほとんどと、背の小さい筋肉隆々のこれまたアジア系の男らがメイン。

 ちょっと指導者的な人たちはひげ面インド人だが、レオタードを着たメタボのマリオにしか見えないので威厳も何も感じられねえ。

 音楽はもちろん生バンド生演奏。

 ドラミングのタイミングと演者のキメのタイミングの微妙なずれが微笑ましい。

 何より間髪いれずに次から次へと様々な演技が繰り出されるが、その約80%が失敗するという超スリリングな展開。

 大道芸に毛の生えた程度の演目だが、それでも、えっ、失敗っっっ!?となると手に汗を握らざるを得ない。

 間近でそのハラハラドキドキが観れるというのが、名も知らぬ場末のサーカス団の真髄だ。

 すべて完璧にこなすよりもずっと身近に感じられて人間ぽい、だからこそ成功したときの歓声は心の底からの拍手となるのだよ。

 ピエロは全員小人症。

 あいつらのコミカルな動きは天性のものなので そりゃもう楽しい。

 くだらねえのに笑いっ放しだ。

 日本もあいつらを隔離しないでもっと世の中に出してあげればいいのに。

 たぶん現代の日本の若者達は日本人の小人症なんて存在しないって思ってんじゃねえの?

 小人なんて、白雪姫の7人くらい童話的な世界のキャラだと思ってんだろうな。


 休憩も挟まず、一気に2時間ちょいサーカスは走り続け、時間を忘れるほど楽しんだ。

 やっぱりサーカスはこうでなくっちゃ!! 

 おもろい、おもろい。 大満足だぁ。

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               団員どものテントは 昔ながらのテント

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                 終わってからも 会場前は遊園地祭り

 
 さてと、ひと息入れたところで夕方陽が沈みかけて来た頃、さっさとコインバートルを後にして、いよいよメットゥパーラヤムの町までバスで行く。

 いったいどのくらいの距離があるのかも分からんかったが、1時間20分ほどで到着した。


 夜の8時前、メットゥパーラヤム駅まで行くとまだ予約窓口が開いていたので明日の列車の事を尋ねた。

 「 予約は受け付けてないのです。 明日の朝5時半にステーションマスターの部屋へ行き列車のトークン(仮切符)を貰いなさい。 それをこの窓口に持ってくるのです。 そうすればあなたは切符を手にすることが出来るでしょう。 」

 俺はインド人の言う事は一度じゃ信用しないので、すぐにステーションマスターのところへ行き同じ質問をした。

「 お前は明日の朝5時半にまずここへ来るのだ。 そしたらトークンを配り列車のチケットを得ることが可能だ。 」 

 どうやら明日の早朝5時半にここに来なければならないようだ。

 
 駅の真裏にある一軒の宿にその日は泊まり、翌朝5時過ぎにステーションマスターの部屋の前へ出向いた。

 5時半を回る頃その窓口は開き、数人の国内外の旅行者が並ぶ。

 俺は早い方だったので列の前のほうだ。

 そのトークンというものはただの紙に手書きで行き先を書いただけの代物で、これを貰うために朝早くから待っていたのかと混乱する。

 それを切符販売の窓口に出すと、7:10発ニルギリ登山鉄道ウーティ行きの切符(自由席)を得ることが出来た。

 しかも何故だか日本円にして16円という捨て値。 世界遺産なのに・・・・

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                                      朝ぼらけの 登山鉄道群    

 
 距離にして46kmとは言え、高さは2000mを越す高さまで駆け上がるので、4両編成のその客車の後方に蒸気機関車が押すような形で連結された。

 そしてゆっくりと力強くシュッシュッと音を立て山道を上昇してゆくのだ。

 ところが走り始めは勢いが付かないのか、途中まで進むと止まってしまい微妙に下がったりする。

 おいおい、大丈夫ですかー!? 石炭係ガンガン放り込んで燃やしてちょうだいよ!!

 で、勢いが付くと一気に駆け上がってくれた。 
 

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                 蒸気機関車を繋げ!!

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                 吹き上げろ! 蒸気!! ポッポー。

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                 うれしそうなインドの乗り鉄君
   

 道中はトンネルが多い。

 短くて50mくらいのをいくつも通り抜ける。

 インド大陸で列車は全国くまなく走ってるが、恐らくトンネルというものはほとんど存在しないんじゃないかと思うな。

 いままで見た事ねえし。

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                 インド国内ではレアなトンネル~

 そんなだからか、もう乗ってるインド人(乗客の95%はインド人観光客)のはしゃぎようが半端ねえ。

 最初は、あぁそうか、トンネルなんか珍しいんだろうなぁ。って思ってたが、5時間もトンネル入るたびに奇声を上げられるとうざくてしょうがねえ。

 トンネル抜けるたんびに一人づつ消し去ってやろうかと思ったよ。

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                 トンネル入ると車内は真っ暗… 消すなら今だっ!!
 

 そんな列車だが、登山と名が付くだけあって車窓の景色は絶景だ。

 渓谷を渡る橋をいくつも越え、広葉樹林地帯から徐々に高山植物が増えてきて針葉樹林帯に景色が変わる。

 そういう風景が高度の上がりを教えてくれ、気温もだんだんと涼しいから寒いに変わってくる。

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                 誰かいるぞ! こっち見んなー

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               恐ろしいほど ボロい橋…

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                 枕木の長さだって ばらばらだぁ

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                 岩壁だって すれすれだぁ


 ひとつの橋を通過したとき、その下方の山林に動く物体を見た。

 それはほんの数秒の事だったが窓側の乗客は全員が目撃したのだ。

 驚きの声が車内に響き渡り、歓喜の声が上がる。

 それは2頭の野生のインド象だった。

 2匹が並んでそこらの草木を喰ってる最中だったのだ!!

 象なんてインドの街中や寺院でしょっちゅう見れるから別段珍しくないし、昨日もサーカスで見たけどよ、野生の象なんて生まれて初めて見たぞ!

 すげえ、やっぱりいるんだな、野生の象ってのは。

 インドやっぱなんでもありだな。 もう好き好き大好き!

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                途中途中、トーマスには水分補給が必須事項

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                 いつの間にか 高度があがってた

 
 そんな素晴らしい車窓は目的地手前まで続く。

 クーノールという駅からは、蒸気機関車の役目が終わりディーゼル車の出番となる。

 客車を押す蒸気機関車から、客車を引っ張るディーゼル車に連結が変わるのだ。

 早ぇ、めっちゃ早ぇーぞ、ディーゼル車。

 しかも力強い。

 文明の進化を感じたよ。

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                 急斜面には線路以外に 滑車的レールも必須事項

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                 ついにディーゼル車の見せ場だぜ 速度もあがる


 この辺りから、芝生が多く茶畑も多い高原地帯へと変わって、ものすごく広いゴルフ場みたいになる。

 家々もお洒落で可愛い。

 さすがにイギリスの避暑地だっただけあって残していったものにヨーロッパのセンスを見出すことが出来んのな。

 でもそこで蠢いてる人間はインド人だが。

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                 茶畑通過中

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                  踏切通過中

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                   クーノール駅通過中

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                高原通過中

 
 5時間20分後、避暑地・ウーティに登山鉄道は到着した。

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                  やっとこ着いた ニルギリ登山鉄道旅の終着


 駅降りると小雨も降っててさみぃ。

 別に南インドにいてもカラッとした春先のような気候で暑くなかったから避暑地に来る必要もなかったんだが、これも全てはインド登山鉄道制覇に向けての試練だな。


 で、ここウーティという街はチョコレートの量り売りが名物みたいで、体の水分の80%がチョコで満たされている俺にとっては母親の母体に戻ったような心地になったよん。
 
 この街の見所は、湖と植物園、バザールくらいだ。

 他にやる事もたいしてねーよ。

 夢見心地で馬に乗って湖の周りを1周したり、湖ボートハウスの遊園地では3Dシアターを3Dグラス無しで見せられたり、珍しくゆでもろこしがありそればっか喰ってたり、植物園の急勾配に肺が破裂しそうになったり、少数民族トダ族の家や刺繍をみたり、名産品ユーカリオイルの臭さに参ったりと、 あら? 意外と堪能してんじゃないの。

 それでも一日中肌寒いんで2泊してウーティは終了だ。

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                 潜入! 街中バザール

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                植物園の謎の大樹木 キモッ

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                 俺はインドで 妖精を見た…


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                トダ・トライブのかわゆい一軒家

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                避暑地ウーティの街並 手前は競馬場

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                 湖畔では荒馬をてなづけた

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                インドのミッキーに何をする
 

 お次は、カルナータカ州。

 南インド3つめの州だ。


 さてさて次回はどんな冒険が待ってるのか!? 乞うご期待。


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             人力こそがターボジェット!!  次回までにはどけときま~す。


                                             From Naokys!



※2009年5月20日から2009年10月22日までの五カ月間にわたった抱腹絶倒な大天竺一周の旅、あの名作【 インド道 】シリーズがリメイクされ、ナオキーズ!旅ブログ 『 ぶらっと、旅る。 』にて蘇る。


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 『 インド道 トゥエルブスゥ 』


   「 コーチン芸能三昧 」~ケララ三部作③~ 2009年7月31日~8月5日


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                港湾都市の新市街 バスより船 リキシャより船                                          



 コーチンと言う街はなんと言うか、海と湖と半島と中州と本土と合わせて一つの街となっていた。

 鉄道駅やバススタンドなどの新市街的な場所は本土のエルナクラム地区にあり、湖の中州にあるウィリンドン島は港湾中心の倉庫街、湖とアラビア海が交じり合う出入り口がある半島が旧市街のフォート・コーチン地区である。

 滞在初日から3日間は新市街エルナクラム地区に滞在し、その後4日間は旧市街フォート・コーチン地区に滞在した。


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               奇抜なインドの高層住宅 センスがあるのかないのか・・・・


 ケララ州には多数の伝統芸能があり、その一つにカタカリ・ダンスというパントマイム劇がある。

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             南インド代表 カタカリ・ダンスは一度見たら忘れられないビジュアル

 数ある伝統芸能の中でもカタカリ・ダンスは一押しのようで、毎夕どこぞの小劇場にて見学する事が可能なのである。


 伝統芸能民族音楽研究家である私がこの期を逃すはずがなく、さらに収集癖が生まれながら備わっている私は全ての小劇場でカタカリ・ダンスを見学し、それぞれの劇場、役者、演技、演目にどういった違いがあるのかを知りたかったのだ。

 情報によればコーチンの街では5つの小劇場で演っているらしいとの事だった。

 それなら毎日違う小劇場へ出向いて行き、コーチンに5日間の滞在も致し方なし、伝統芸能の為なら致し方なしと、意気込んでいた。

 初日に観に行こうとした小劇場があわや潰れて閉館していたので観に行くべき小劇場が4つに減った訳だが、何故か滞在は1週間に延びるというインドマジックが私を包み込んだ街でもあった。


 カタカリ・ダンスは夕方5時半から開場開演というのがどこの小劇場でも基本時間なので、それまで毎日昼間は何をしていたのか。

 かつてのビーチのように、ただただ海を眺めているだけ、という訳でもないのだ。

 それなりに観光スポットもあり、エルナクラム地区は大都市なのでショッピングも可能なのだ。


 初めてこの街・コーチンにバスで辿り着いた時、私はバックウォーター・クルーズを共にしたsky氏と一緒だった。

 2人で宿探しを開始するも、全く空いている部屋がある宿が見つからない。

 外国人を泊めたくないのか、または何か週末に催しものがあり観光客が多くて本当にフルなのかは半々で分からなかったが、とにかく泊まれる宿が全く見つからなかった。

 これまでに何度も、このように空いている部屋が無く、重いバックパックを背負い街中を数時間彷徨うという目に合っていた私は、結局のところはなんとかなり無事宿を確保する事が出来たのを思い出し、とにかく流れに身を任せた。

 そしてなんとか2時間もかかってようやく鉄道駅周辺にて宿を確保することが出来たのだった。


 そんな宿の部屋にはTVがついていた。 TVがついているのだ。 TVだ。

 チェックインを果たした遅い午後から、sky氏はさっそく一人で観光に出かけて行ったが、私は久しぶりの文明の利器であるTVの前にかじりつき、「 HAGEMARU 」 や 「 KITERETU 」 などのジャパニーズ・アニメーション(インド言語吹き替え版)に魅入っていたのだった。


 夕刻、sky氏と待ち合わせてカタカリ・ダンス鑑賞。

 メーキャップ時間から始まり、演技動作の説明、本編演目という流れが基本のようだ。

 日本の歌舞伎よろしくカタカリダンサーも顔全体に隈取りを施す。

 それは天然素材の石を使ったナチュラルな化粧である。

 いわゆる善玉主人公は緑色、悪玉は赤色、女形は黄色とそれぞれの役によって顔の色を塗り分けるのだ。

 そして顔の表情、目の動き、目力で喜怒哀楽を明確にし、指先の細かい動きで言語を表す。

 それらの動きを組み合わせながら、2組の太鼓、ベルの音を背景として物語を進めていく。

 これまた歌舞伎と同じですべて男性が演じているのだ。

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              この段階からすでにショーの一部だ

 初日に訪れた小劇場は「シー・インディア・ファウンデーション」

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                看板がなけりゃ 見つけられない場所にある

 メーキャップが終わった後、太鼓のリズムに合わせておじいの役者が、それがどういった動きでどういった感情を表しているのかを説明する。

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                 おじいは前説 説明書みたいな役割だ

 一通りの動きで表す感情の説明が終わると、顔を緑色主体に彩った主人公が金の大きい円形の冠をかぶり、全体的に赤いスカート状の伝統衣装を着て登場した。

 太鼓に合わせ、3つくらいの短めのパントマイムを演じて終了だった。

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               出演者はこのお方だけだったが初見なのでまだ良かったのかも…


 sky氏と私の感想はお互い少々がっかりだったと。

 カタカリ・ダンスとはこんなものなのかと、説明的なものばかりでなくもっと演劇的な、いわゆる歌舞伎の一幕みたいなのが観たかったと。


 翌日の昼すぎに、sky氏は未だ途中経過であった世界一周へ旅立って行き、私はシェアしていた部屋を引き払いひとり宿を変えた。

 移った宿のシングル部屋は気に喰わなかったが、かと言って他の宿を探しに行く気もなくTVが付いているというだけで妥協してしまった。

 その日の夕方までディスカバリー・チャンネルを大いに楽しんだ。



 2日目に訪れた小劇場は「コーチン・カルチャーセンター(エルナクラム支店)」

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                    建物は良い感じである

 ここも開場してからの流れは一緒で役者へのメーキャップ風景から始まる。

 今宵は女形の登場のようだ。

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                まだ途中よ、馬鹿野郎。 という心の声がした

 顔や指の動きの言語説明がこの小劇場ではCDで流し、その説明に合わせて演者が動く。

 なにかいまいち物足りなかった。

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                目を合わせたらビームが飛んでくるんじゃないかと思う・・・・ 


 本編は初日とは違いインドの叙事詩「ラーマヤーナ」の一遍を女形が演じた。

 日本の歌舞伎の女形のような美しさなど皆無で、新大久保や錦糸町で細々と営業を続けている場末のおかまバーのママのような化粧のノリの演者が、赤ちゃん(ベイビークリシュナの人形)を抱きあやすしぐさの演技はリアルであり、見ていて気持ち悪くなるのであった。

 そして極めつけの演技は、自分の乳首に毒を塗りそれを赤ちゃんに飲ませて殺害しようとし、その自責の念にかられ、ラストシーンにて叫び声をあげるのだが、地の底から聞こえてくるような恐ろしげな遠吠えのような、喉の奥底に地獄があるような叫び声を突然発したのだ。

 例えるなら、おかまバーのママが情夫のおっさんを痴話喧嘩で刺し殺し、気が付いた時には後の祭りでとんでもない事をしてしまったと、恐れおののいて大声を出す後悔の叫び声と同種のものだったのだ。

 そのスクリームはいまだにトラウマとなり、たまに耳の奥で空耳のように聞こえてきたりする程なのだ。

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               このママが放つスクリームは脳にこびりつく音波

 3日目はエルナクラムの市外をうろつき、TVを観ていたら過ぎ去って行ってしまった。

 これではいかんと4日目に旧市街フォート・コーチン地区へ移動し、新たな宿を取り直した。


 新市街から旧市街への移動は湖をボートで移動するのが一般的だが、時刻表を把握していないとずいぶんと待たされる事なり時間の無駄になってしまう。

 私はそれで乗船のタイミングを何度も逃し、行き先はなんでもいいからとりあえず乗ってみて降りたところからまた考えようと焦り、色んな船着場をたらい回しになった上、結局待ってた方が早かったなんて事態に陥った事が多々あった。

 バスでも行けるが遠回りな橋を通るので早くても40分はかかるのだ。

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                                     大型タンカーもゆく

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               小型船もゆく

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                タクシー船は超満員

 外国人観光客には主に旧市街のフォート・コーチン滞在がメインとなる。

 ここはかつてポルトガルが植民地として開いた場所であり、香辛料貿易の中心地として栄えた歴史ある港街でもある。

 ヴァスコ・ダ・ガマの墓があり、オランダ時代の名残りあり、ユダヤ人街ありと、その時代時代の占領国の跡やいくつもの教会がいまでは観光スポットとなっているのであった。

 また岬にはチャイニーズ・フィッシングネットが仕掛けられており、そこで採れた魚を調理してもらって食べる事も出来るのだ。


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               本邦初公開 ヴァスコ・ダ・ガマの墓

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                 教会も白くて南国的

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                大聖堂の中 静かで涼しいアーメン

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                ユダヤ人街の骨董通り

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                  見かけのわりに あまり大漁ではなかった

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                ラジャスターン州の操り人形も売っとった



 4日目に訪れた小劇場は「コーチン・カルチャーセンター(フォート・コーチン支店)」

 おととい観たオカマもどきの叫び声と同系列の小劇場だ。

 さすがにフォート・コーチン地区のほうが鑑賞に来ている客の数が多く、説明や設備などしっかりと整っていた。

 メーキャップ後、言語説明。

 ここまで毎日のように同じ流れを見ているとある程度、おっ?次はあの動きをやるな!とかが分かってきて身近に感じられるようになっていた。

 本編には3人の役者が登場し、主人公、女形、悪玉の勧善懲悪パントマイム劇だ。

 悪玉がいかさまギャンブルで主人公の女や持ち物全てを奪い取り、嫌がる女をぶっ叩いたりする。

 女が泣きながら主人公に 「 悪玉のはらわたを引きずり出し、その血で私の髪の毛をといてくれ 」と、どっちが悪玉か分からないようなセリフを吐き(この場合声は出さずに動きで表現)、懇願する。

 ラストは主人公がまんまと悪玉のはらわたをひきずりだし(赤い繊維が飛び出す)、願いどおりに女の髪を血に染まった両手でとく、というハッピーエンドであった・・・・

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                本日のメーキャップおじい

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               生演奏で動きの説明

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               あまり願いを聞きたくない 女形

 5日目に訪れた小劇場は「ケララ・カタカリ・センター」

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                この小劇場は良かったよ 

 いよいよこの街コーチンで最後のカタカリ・ダンス鑑賞だと望む。

 ここはラストにしてどこよりも一番おもしろく最高に良かった。

 小劇場の設備も抜群で、とても観やすくなっている。

 メーキャップや説明は相変わらず同じだが、本編が秀逸だった。

 太鼓が2種類あり、ベルを鳴らしながら一人がセリフやあらすじを唄う。

 それに合わせた3人の演者がそれぞれの役を3幕に分けて演じているのだ。

 それはもう見応えを感じる素晴らしい演目だった。

 もしコーチンに行こうとしている人がいるなら、間違いなく私はこの小劇場をお奨めしよう。


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               白いエラ張りの作業は真剣

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                メーキャップは終わると案外暇そう

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                 悪役登場 女が捕らえられた!

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                ヒーローに泣きつく女

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                 闘うイイやつと悪いやつ

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                 ごめんなさいで 幕切れだ
  

 そしてこの小劇場では、カタカリ・ダンスが終わった後に伝統音楽も観る事が出来た。

 インド大陸には大きく分けて2つの伝統芸能音楽が存在する。

 北インドのヒンディスターニー音楽と、南インドのカルナーティック音楽だ。

 伝統芸能民俗音楽研究家の私がこれを見逃すはずがないのは必然であろう。


 今宵の南インド・カルナーティック音楽は奏者と神が一体となり、ただ観ているだけの私を嫉妬させる程の素晴らしい音を弾き出していた。

 両面太鼓のムリダンガム、調律をインド旋律に合わせたバイオリン、蛇の皮を張ったタンバリンのガンジーラ。

 この3人が即興で奏でるその音階は一日一丁の出来では到底不可能。

 彼らは母体より生れ落ちたとき、すでにそれぞれの楽器を抱えてこの世に誕生したことであろう。

 そんな3人がアイコンタクトで自分の体の一部でもある楽器から生命溢れる生音を紡ぎ出してくる。

 まるでこの世にはこの3人しか存在しておらず、存在しているものと言えば今自分達が奏でている音だけ。

 それを心ゆくまで楽しんでいる光景を観ているかのようだった。

 そこには間違いなく音楽という名の神が誕生したようでもあった。


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                音楽はなんでもライブに限る 神の領域即興演奏!!
 



 6日目、何故だか私はまた「ケララ・カタカリ・センター」にいた。

 昨晩の演目と演奏に興奮が冷め切らずについついやってきてしまったのだ。

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                魂の演武化粧  
 

 この日は最初にケララの格闘技・カヤルパヤットの演武。

 素手、関節技、棒術、刀剣、鉄鞭とデモンストレーションが始まる。

 この時点で観客は私の他に西洋人が2人しかおらず、うれしくも貸切状態であった。

 カタカリ・ダンスが始まる頃にはさすがに幾人もの観客が鑑賞しに来た。

 毎日違う演目を上演するので連日観てもまずカブる事がない。

 それならそれで全種類の演目を観てみたい気もするが、さすがにそこまでは時間的に無理であろう。


 今夜も3人の演者で昨晩と似たようなストーリーであったが、しかし今宵はカタカリ・ダンスの中でも第一級の主役格、クリシュナが登場した。

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                いよっ! 待ってましたぁー  クリシュナ屋っ!!  


 もうこれだけ観れたら本当に本望で、コーチンに長居した甲斐もあったと心底感じたのである。


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                演目にかかせない バックグラウンドの演奏隊

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                 よくわからんだろうが、イスに座ってる

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                恋の一幕 たぶんハッピーエンド

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               ・・・・たぶん  ハッピーエンド・・・・  


 ラストは伝統音楽の時間。

 北インド・ヒンディスターニー音楽が始まった。

 若いシタール弾きと、若いタブラー奏者との掛け合い即興ミュージックに私の脳みそもバイブレーションを感じ始めた。

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                シタールの奏でる音は インドの雄大な響き



 時間というものはこんなにも早く過ぎ去るものなのか。

 体も心も震える思いで宿に戻っていった。


 そんな伝統三昧のコーチン滞在の6日間だったが、昼間は昼間でちゃんと観光をそれなりにしているのである。

 新市街エルナクラム郊外の2つの博物館、ウィリンドン島、マッタンチェリー地区、教会や大聖堂にビショップハウス、砲台がある岬にビーチに各国の墓場。


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               散歩の途中の 旧市街の一角


 が、毎夜の小劇場巡りの素晴らしさに比べれば昼間の観光など子供の遊びのようなもので敢えて筆記はしない。

 どれもインターネットやガイドブックを読めば得られる観光地スポットばかりだからだ。

 ビーチにいたってはその名を取り消して貰いたい狭さであった。

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                ビーチと聞いてやってきたが唖然とする民


 ケララ州もこれでおさらばとなるが、非常に離れがたい気分で胸いっぱいだ。

 飯が美味くて気候が良くて、宿も良くて気分も良い。


 もしインドに行きたい人がいるならば、私はケララ州を薦めるだろう。


 インドに来た事があっても、まだ南インドに行ったことがない人にも薦めるだろう。


 そしてこの地に来た事がある人とは、いつまでも話が尽きることがないだろう。



        ケララ三部作③「コーチン芸能三昧」 fin
        

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                えっっっ!? もうおわり? 来週まで待てにゃ~~い


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 『 インド道 イレブンス 』


  「 バックウォーター・ブルース 」~ケララ三部作②~ 2009年7月30日


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               インド本場のジャングルクルーズ半日の旅


 インド大陸の南、西海岸に長く延びるケララ州。

 その沿岸部の多くは水郷地帯である。

 そこにコーラムという小さな町がある。

 そこからこれまた小さなアレッピーという町までの87kmの道程を、私はボートで無数に延びる運河を一路北上し、ゆったりと進むことにしたのである。

 ヤシの木に覆われた水郷地帯を8時間かけてゆく、時速10kmののんびりとした船旅だ。

 このバックウォーター・クルーズは観光客に人気の行程であり、とてもメジャーなのだが、当時は雨季でオフシーズンの真っ最中、果たしてボートは大丈夫なのであろうかと不安もあった。

 1日中雨が降り続いたり、大波で終始揺れっ放しは楽しくもなんともないからだ。


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                このサファリ丸で ゆったり水郷地帯を進む


 そんな不安も当日の朝、コーラムの船着場に着いた時には全くなくなっていた。

 曇ってはいたがクルーズのコンディションは良好のようだからだ。

 ボートはある程度の大きさがあり1階船室が座席、2階はオープンエアでイスが並べられていた。

 操舵手・船員の他に、西洋人ツーリストが6人、私を含めた日本人2人の計10名が乗船している。

 その乗船人数の少なさのため、ほぼ貸し切りの感が強く広々として快適である。


 船上で私は久しぶりに日本人と出会った。

 そして彼、sky氏も久しぶりに日本人と遭遇した言う。

 それが奇遇にも2人共プリーのサンタナ・ロッジを出て以来のことだった。

 今は雨季と言うだけで南インドの旅を倦厭しがちだが、実際旅をしているとこれ程良い時期もないのではないかと逆に思うのである。

 気温は30度を超えているだろうが、カラッとしていて湿気がなく爽快な日々が続き、雲も多く頭上にかかり直射日光に焼かれる心配もない。

 雨は降っても軽いスコールが朝晩だけだ。

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                 たまに晴れ間が広がるとこんな感じ

 その日の天候はほぼ曇りであった。

 ゆっくりと進むボートは何ともゆるいものである。

 周りの景色もこのくらいのゆるい速度で見れば、歩いて散策しているのと何も違わない風景が目に映る。

 ヤシの木のジャングルが圧倒的な緑をもってして生命力を放ち、河の流れは緩やかで行き交う船の波紋が幾重もの音を奏でているようだ。


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               こいつは超高級AC付きトイレ完備のハウス・ボート


 これまでも、船に乗って水上生活者や水上家屋をアジアの方々で目にしてきたが、ケララの水郷地帯は様相が違った。

 岸辺にレンガ造りのカラフルに色付けされたカワイイ家が建ち並び、花壇には名も知らぬ南国の花が咲き、水の上の住民も比較的裕福そうだった。

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                 生ジャングルのクルーズにワニやらなんやらはいない

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                 もう舟としての機能を存分に使い過ぎ・・・・   


 途中途中にケララ独特の漁法、「 チャイニーズ・フィッシング・ネット 」と呼ばれる大きな木製の仕掛け網が水上にせり出していたりもする。

 ケララ州にはキリスト教徒も多く住んでおり、あちらこちらに教会を見る事ができキリスト教系の学校も数多く見かけた。

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                 中国から伝わったという チャイニーズ・フィッシング・ネット

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                中国ネット群 こいつらで魚も一網打尽  

 ボートはランチタイムで一度着岸し、岸辺の村の食堂で南インドの定番ランチ・ミールスを頂いた。

 「ミールス」というのはバナナの葉の上に、日本米より数倍の大きさがある米粒のライスが山のように乗せられ、2~3種類のカレー、アチャールという漬物、ヨーグルトなどが乗せられている給食のようなもので、米もカレーも全ておかわり自由なのだ。

 ケララの食堂は昼時になるとメニューがどこもこの「ミールス」ばかりになる。 「ランチ」=「ミールス」という訳だ。

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                ミールスとはこんなお食事 米粒がデカい

 もちろん美味しく頂いた。

 ここに限らずケララ州の食事が抜群に美味しい。

 文字が変わり言語が変わるように、食の味も州により微妙に変化するのだ。

 南インドの中でも一番美味しいのではないだろうか。

 と言う事はだ、インド大陸の中で一番美味しいという事に他ならないのだ。

 食べ物の話が続くが、今はバナナが旬である。

 店先に吊り下げられていたり、店頭に並べられているのを見て驚いた。

 バナナにこんなにも種類があったのかと・・・・

 太いのやら赤いのやら青いのやら小さいのやら。 数種類ものバナナがこの世には存在していた。

 バナナなど3種類くらいしかないと思っていたので、新鮮な驚きを得たのだ。

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                例えばこんな 実りすぎモンキーちゃん


 さてボートは夕刻に近づくにつれ、目的地であるアレッピーにも近づいてきた。

 夕焼け空が水辺のジャングルの上空を覆う頃、我らがバックウォーター・クルーズのボートは川沿いの船着場に着岸となる。


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               陽も暮れりゃ 船旅も潮時   


 何故か下船時になると雨がしとしと降りだしてきた。

 幸運なのか不運なのかよく分からない有様であったが、バックウォーター・クルーズの船旅は濡れずに済んだ。

 旅神様の恩恵であろう。


           ケララ三部作②「バックウォーター・ブルース」 fin


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                  次週の、木曜日まで 乗ってくかい?
 

                                                                          From Naokys!



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 『 インド道 テンス 』


   「 無力 オンザビーチ 」 ~ケララ三部作①~ 2009年7月23日~7月29日


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              緑の木々に たわわに実る 特大コウモリ(フルーツバッド) 



 見渡す限り、視界の許す限りヤシの木が生えている。

 まるで巨大な熱帯植物園の中に家が建ち並び、街を形成しているようだ。


 ヤシの木の支配圏であるここケララ州に私が入ったのは、早朝カニャクマリを出発し3時間程経ったバスの中であった。


 州が変われば国が変わる、まさにその様な変貌具合に驚きを得る。

  一見、人種も言語もどこが違い、また変わったのかは分からなかったが、バスに揺られ州をまたがり何か変化はあったか?という目で見ると、よくよく違いが見えてくる。

 まず、小・中学生の女の子の制服がズボン姿だったのに対しここではスカートになり、髪型も三つ編み輪っかが主流だったのから、みなツインテールになっている。

  タミルナードゥ州の女の人は鼻がスーッと通った直線的な鼻立ちだったのに対し、ケララ州の女の人はどこか丸っぽい印象だ。

 文字は相変わらず丸くてタミル文字との違いはさっぱり理解は出来ないが、どことなく書いてある雰囲気が違うのだ。

  もちろんケララの人(マラーテャム語)はタミルの人(タミル語)と会話が出来ないと言う。


 そして何よりも人間が活気づいていてアグレッシブだ。

  南国の元気がなみなみと溢れているのが、一介の旅行者である私にもはっきりと見て取れるのだ。


 まず私が向かった先はアラビア海を目の前に有する、インドでも美しいビーチとして知られるコヴァーラム・ビーチ。

 幸運な事にもオフシーズンの今の時期、ツーリストは少なくビーチ周辺も閑散としているので、宿がとにかく安いのだった。

 私はその利を生かし、ダブルルーム・ホットシャワー・テラス付きの1軒のコテージを借りる事が出来た。(1泊200ルピー、約500円)

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                一期一会の安宿には 想ひ出がいっぱい

 雨季だからと言って一日中雨が降り続く訳ではない。

 1日数回のスコールが来るという訳でもない。

 青い空には太陽が堂々と輝き、水平線上には陰影の濃い入道雲が力を誇示する山脈のように膨らんでいる。


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                天気が良けりゃ 気分も良い酔い



 そして海は・・・・。



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         ・・・・残念ながら海だけはモンスーンの影響を思いっきりまともに受けていた。


 終日満潮状態で砂浜のスペースはほとんどなくなり、続々と迫り来る津波のように荒波が牙を剥き出し、ここでも小さな子供なら簡単に持っていかれそうだ。

 それでも週末になるとインド人観光客が大勢押し寄せて来ては、波打ち際にて牙を剥く波と戯れているのだった。

 遊泳区間も狭められ、しかもそれを越え、自由に泳ぎ回るインド人にセーフガード達の笛の音は止む事がない。

 インド人達は海に入ると我を忘れてはしゃぎ回るからだ。 子供も大人も関係なくだ。

 私は西洋人よろしく浜辺にて、ひねもす日焼けに徹していた。

 海に浸り浜辺に寝転ぶ、体が熱くなると海に浸りまた浜辺に寝転ぶの繰り返しで、一足早い夏を堪能していた。

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                堪能しすぎて クラゲ化したナオキーズ!


 コヴァーラムでは毎夕、アラビア海に沈む夕陽を眺めるのがいつのまにか日課になり、夕陽を見る為だけにこの地に滞在しているようなものだった。

 特に陽が沈んでから夜になるまでの時間は何にも変えがたく、見上げる空一面が徐々にオレンジから紫へ、そして濃紺がまだ明るい西の空を圧縮していく様はまさに今、神が自然という名の筆を取り、描いている最中なのだと思わせる大自然の神秘的アートであった。

 そしてその情景が冷めやらぬうちに、藍の空上に三日月が鋭く銀の光を放つのであった。

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               1日の中で一番好きな時間帯 サンセット・フィーバー

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             月ってなんで写真にうまく撮れないんだろう 絶対小っちゃくなる  


 数日後、コヴァーラム・ビーチを後にした私だが、次の行き先もまたビーチである。

 コヴァーラムよりインド西海岸を北上すること80km。

 ヴァルカナ・ビーチ。

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               荒波に削られて そのうちなくなりそうな断崖&絶壁&ビーチ


 砂浜から、一気に2~30mほどの高さに切り立った崖の上に、レストランと宿が並ぶ。

 土産物屋が横一直線に並び、眼下にはアラビア海がどこまでも遠い。

 しかしここもビーチと呼べる砂浜は皆無に等しく、人の気配も少なくオフシーズンを感じさせるが、崖の上から眺める景色もまた格別なのだ。

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                 崖の上の小道 色合いがインドなお店屋さん

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                 突然の小道の崩落も インドならではのアトラクション


 夕陽のショータイムが始まるまでは、海をただただ眺めながら過ごす。

 ここには時間というものが存在しない。

 家と仕事場を行き来する日常や、何かに追い立てられながら生活する日々とは無縁の土地なのだ。

 オープンテラスのレストランから遙かな海を眺め、ビールをちびちびと飲み、大海からの風に吹かれて無心にボーっとしているのが、むしろ今の私の仕事なのであるが。

 時に沖合いでイルカが数匹ジャンプしているのも、円を描いていた海鷲が急降下して魚をキャッチするのも、夕焼けが始まるまでの単なる暇つぶしの余興に他ならないのだ。


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               時間はゆるく 心もゆるく 脳もゆるく 1日の終わりが始まる


 ヤシの木の領域で、荒れたアラビア海に季節を感じ、空のキャンパスに自然を感じる。

 数億年繰り返されてきた流れの中でさえ、同じ瞬間に出会う情景などまずあり得ないのだ。


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                 日の丸が見えずとも 光のショーは止まらない


 それを明確に体感し、畏怖の念を抱きながらも、なすすべも無い、私自身の小ささに少々焦燥感も得ていたビーチでの日々であった。




              ケララ三部作①「無力 オンザビーチ」    FIN



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    「また来週だってよ。」  「マジかよ! じゃあカアちゃんとこ一度帰って待つわ。」 「あぁ。」     


                                              From Naokys! 


※2009年5月20日から2009年10月22日までの五カ月間にわたった抱腹絶倒な大天竺一周の旅、あの名作【 インド道 】シリーズがリメイクされ、ナオキーズ!旅ブログ 『 ぶらっと、旅る。 』にて蘇る。
 
   毎週木曜日配信中!!! 一遍たりとも見逃すな。



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プロフィール

ナオキーズ!

はじめまして!             
 旅好き、アジア好き、遺跡好き、神社仏閣好き、大道芸好き、パフォーマンス好き、民族音楽好き、倍音好き。

 人生どうにかなりそう!アジア人を見てそう思い、楽観的・わがままになってゆる~い人生、テンションあげて生きてます。

 あぁ、もう残り半分。 旅に出ねば。 

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