「 PISS OFF カルナータカ州の愚民ども 」 2009年8月9日~8月13日
何かの祭りの最中だった マイソールの一角
ウーティを出発したバスはニルギリ山を越え、ムドゥマライ動物保護区という森の中を通り抜ける。
ニルギリ登山鉄道車中にて、野生の象を目撃したラッキーな俺は今度はどんな動物達が車窓から拝めるのか?
ここムドゥマライ動物保護区には、ベンガルトラやヒョウなんかが生息しているらしいし、もちろん象だっているのだ。
カメラを抱えいつ動物達が飛び出してきてもシャッターを切れるよう身構え、臨戦態勢で心待ち。
だがしかし、そうそう野生動物が見れる訳がねえんだよな。
結局見れた動物達は猿・水牛・猪・鹿に数種の鳥くらいだ。
インドの街中で見れる動物ばっかじゃねえか。
しかも街ならこの他に牛や犬、猫、ヤギに豚にシマリスにインド人と、もっと数多くの動物達が生息してるぞ。
がんばれ!ムドゥマライ動物保護区!!
そこを抜けるとカルナータカ州に入った。
ここからデカン高原の始まりだ。
荒涼とした岩山が剥き出しになり、ごろっとした岩々が地表に露出している。
低木だけになり多肉植物や棘のある乾木が道の脇を占め、芝生のような緑が広がる。
雲は近くいかにも高原の雰囲気がある。 が、なにか貧乏臭い。
いままでの南インドとは明らかに違う何かを感じる。
畑にはやせ細った花の落ちたひまわりが頭を垂れ、か細い人参が畑一面に植えられてる。
立派な角を持つタミル牛や野良犬は、あばら骨が顕わに目も虚ろ。
最初に辿り着いた町のバススタンドでは、幾人もの乞食がまとわり付いてくる。
こ、これじゃあ、まるでインドではないか!!!
そう。 楽しかった南インドはもう来ない。
旅の行程上、北へ向かっているので致し方ないが、次々と北インドの鬱陶しさが身に染みて近づいて来るのだ。
そうして着いたのがカルナータカ州の一都市・マイソール。
周りの貧乏村や痩せた土地の栄養分を全て吸い取った結果栄えた様な豪華なマハラジャタウン・マイソール。
街の中心にはインド随一とも言われる豪華絢爛なマハラジャ・パレスがどんと控え、その周りに街が出来上がっていた。
雑多な街並みが南インドの終焉を感じさせた
このマハラジャパレスは今では博物館として内部見学が出来る。
週末ということもあり、インド人観光客がわんさか。
そして外見よりも果てしなく豪華な内部はまさにマハラジャの宮殿としてふさわしい。
やはりマハラジャのおうちというならこうじゃなくっちゃだぜ!
すべての物を手に入れ物欲の限りを尽くし贅沢三昧の暮らしっぷり。
一度ならずは夢見る男のロマン、ハーレムinマハラジャ。
夜の宮殿は ビッカビカッ!!!
そんな街中で一人の若いプッシャーが声をかけて来た。
こういう奴はインドにはごまんといる。 インドに限らず、世界中にいるだろうがな。
シカトするに限るウザイこやつはかなりしつこかった。
何度シカトしようが、NOと言おうがずっと纏わり付いてきた・・・・
「 分かったよ。 じゃあお前が働いてるそのコーヒーショップをみるだけだぞ! 」
インドにアムステルダムのようなコーヒーショップなど存在する訳がないんだが、もしあるなら見てみたいもんだと思ったのが運の尽き。
「 ほら、こっちだこっち。 」
街のメイン・マーケットに入っていく。
この街・マイソールは香料の産地として知られ、お香や香水、各種のオイルが特産なのだ。
特にサンダルウッドはこの街の代名詞と言っても過言ではない。
「 ほらこの粉がこれからお香になるんだよ。 こっちは天然のオイル、どれが好き? 」
「 おい、お前。 俺は嘘つきが嫌いだ。 お前はコーヒーショップに案内すると言ったのに、なぜ名産品を薦める。 これ買ったらお前にマージンが入るだけだろう? じゃあな。 」
と言って立ち去るもどこまでも付いてくる。
「 どこまで行くんだ? 」
「 俺はこれから美術館に行く所なんだよ、じゃあな。 」
「 それならこっちだ! 着いて来いよ。 」
「 いや、場所知ってるし。 お前はコーヒーショップに勝手に戻れ。 」
「 コーヒーショップもこっちなんだ。 」
・・・・ぜってー違ぇ!!
お前の嘘はもういいから俺を一人にしてくれ、と先へ進むといつの間にやら一人若いのが増えてる・・・・
「 ハロー? ユー、ジャパニ? 」
と言い、両手を俺の肩にかけ、こいつも一緒に何故だかついて来る。
「 誰だ? お前。 おい、こいつはお前の友達か!? 」
最初のプッシャーに尋ねる。
「 いや、知らない。 ここらには後を着いて来て外国人を襲う奴が多いから注意しろ。 」
そんな奴よりまずはお前に注意だよ。 しかもすげえ仲良く喋ってるしこいつら。
「 ユー。 ユーウォントチャイ? 」
「 いらねえよ。 飲みたかったら勝手に飲め。 俺にたかるな! 」
もうすぐ美術館に到着する直前の事、
「 おーい。 ここがコーヒーショップだ。 ちょっと寄ってけよ。 」
・・・・誰がどう見てもただのチャイ屋だ。
それとも何か? このマイソールじゃチャイ屋の事をコーヒーショップって呼ぶのかい?
いい加減しつこいんで2人についてチャイ屋に入っちまった。
プッシャーが店の親父と親しそうに会話し、勝手にチャイを注文する。
「 おい、俺はチャイは要らんぞ。 何も要らん。 」
プッシャーがチャイを親父から受け取る。
グラスに入ったチャイと空のグラスを2つ持ってる。
その空のグラスに半分ほどチャイをいれ、俺に渡す。
あれれ? この手口はもしや何か混入されてるってよくある話でないの?
飲んだら睡眠薬効果で眠っちゃってケツの毛までむしられるんじゃねえの!?
しかしこんな大通りのチャイ屋がグルでそこまでするか?
一発でばれるじゃん。
ていうか、俺チャイいらねーし。
と思いつつ、手渡されたチャイに恐る恐る口をつけてみた。
2口くらいすすってみると、プッシャー、チャイ屋の親父、レジの親父、後からついてきた奴とが、みんなで一斉に俺の方をガン見して、ちゃんと飲んでるか動向を伺ってるのが丸分かる。
ゆっくりと、その一人一人と順番に目を合わせ、こっちも奴らの様子を伺ってやる。
こりゃー、ぜってー入っとるね、何かしらの薬が。 チャイに…
「 おい、俺はチャイいらねーんだからお前にやるよ。 飲め。 」
と、後から付いてきた奴に渡してみると、そいつは手を引っ込めて大げさに首を振る。
「 お前、さっきチャイ飲みたいって言ってたろ? やるから早く飲め。 」
とそいつの顔の前にグラスを突き出すが半笑いの表情で受け取らない。
埒が明かないので、グラスをその場に置き、無言でその場を立ち去り店を出た。
「 おーい。 どうしたんだー? 美術館なら、ほらすぐそこだよ。 」
美術館を目の前にしてまだしつこい。 まだついてくるか!
そして美術館の敷地内にちょうど何か民族ダンスコンテストみたいなのをやってる会場があったのでそこに入り座席に座る。
その隣にしつこい若いのが2人とも座る。
「 お前らなぁ、しつこいんだよ。 嘘つきは嫌いだって言ったろ? 行け!! 」
と、シートに座りシカトしてダンスコンテストを鑑賞しているが、実はものすごく心臓がバクバクしてきて今すぐにでも横になりたい気分になっていた。
はっはぁ~、こいつらちょっとでも俺がさっきのチャイに口つけたもんだから様子を見に来たんだな?
気分は睡眠薬というより麻酔薬みたいな感じで、眠くはならないけど体が重く、全く動かしたくない気分。 ただ座ってるだけでもすげぇキツくて、効いてないフリをするので精一杯・・・・
たった2口すすっただけでこの効果。
いったいどんだけ混入しやがったんだ?こいつら。
だがこんくらいなら俺にとっちゃ物足りないくれーだ!
しばらく押し問答してる内にようやく諦めたのか、効いてないと思ったのか奴らは帰って行った。
完全に2人がいなくなったのを確認して全身の力を抜き、もう駄目だとシートにもたれかかった。
その後、1時間程して効果が切れたのが分かったが、美術館と王宮観光してる間ふわふわしててめっちゃ気持ち良かったのは気のせいか。
それにしても危ねえ街だぜ。 もっと気をつけなきゃだな。
復活を遂げ 余裕のVサイン
宿泊はバススタンド裏手の安宿に泊まったのだが、枕カヴァーの縫い目にぎっしりと南京虫が住みついてた。
不思議と、やたら痒いが痕にはならず、しかもどこを刺されたのかもわからないので南京虫じゃないのかも知れないが、蚤でもダニでもない。
が、ベッドバグには変わりがない。 見つけ次第殺しまくってたら白いシーツに赤い流線がいくつも付いた。
ホテルの皆様、すいません。 いや、知ったことか!
牛だって 観光したい!
自分の浅はかさもあるが、マイソールはそんな訳で次の核実験候補地として推薦したいくらい嫌いになった。
王宮の夜のイルミネーションも綺麗は綺麗だったが、ディズニーランドみたいで外見だけだな。
この箱庭の中だけが世界の全てだと思ってんじゃねぇのか?
日が暮れはじめると 騎馬隊がやってきた
そこだけは すげえ綺麗・・・・
夢の国の 宮殿のようだよねん
しかし郊外にある村・ソームナートプルの、ケーシャバ寺院は物凄い見応えがあったよ。
ホイサラ朝の建築物はどれもここまで細かい彫刻なのか?と驚きを隠せない石彫りの芸術作品だった。
是非、ウチに持って帰りたい寺院のひとつだ。
こりゃもう 寺院自体が繊細な彫刻
しかしこの街はもういいやと、ITタウンとして名高い、バンガロールにさっさと移動した。
最近話題の、頭の良いインド人はこの街から出た人間ばかりとのこと。
どんな大都市で、どんだけ進んでいるのかと思ったが着いたバススタンド周りは下町で、ド汚いゴミ街でよくあるインドの街じゃあねえかよ。
インドの街の大きさの基準として、ゴミの多さでその街がどのくらいの規模か測ることが出来る。
初めて着く知らない街でも、だんだん道路や線路の脇にゴミが増えてきて匂いが鼻に衝く。
それなのにいつまでもゴミ山が続き、なかなか街の中心が見えて来ないなと思ったら、そこはもう大都市だ。
ゴミ山が自然発火してて焼けた匂いが充満してるならそれはもう充分大都市としての証だ。
逆に村なんかはそこここにしかゴミがなく、ちょっと村を出ると極端にゴミが減るのだ。
人の多さと街の大きさとゴミの量は比例しているのだ。
で、この街はゴミタウンという最初の印象通りにド汚え大都市だった。
どこの大都市もそうだが新市街だけは綺麗だ。
道も綺麗だし、緑も多い。
仕事には来るけど人が住む場所ではないからだろう。
バスやオートリクシャを利用しないと街の移動が大変な大きさを誇る規模の街で、歩くのはつらい。
しかもこれだけの交通量だと排気ガスがひどい。 結局汚いのか。
都会 知ってる店があるだけでもうそこは都会
そんな新市街を歩いてると、4人組のガキが声をかけてきた。
日本人は珍しいのか、よく声を掛けられたり、写真を撮られたり、いつの間にか携帯で写メられてたり、ムービーで盗撮されてたりとかする。
だからまたか、と思ってたらこいつらはちょっと様子が違った。
あきらかに調子に乗った小僧のからかい方だったのだ。
「 おい、タバコ持ってる? ちょーだい。 」
「 あっ、俺煙草吸わないんだ。 」
「 あっそう。 その帽子いいな、ちょーだい。 」
「 やだよ、自分で買え。 」
「 そのサングラスいいな? ちょーだい。 」
「 なんでだよ、自分で買え。 」
というやり取りをしつつ歩いてると、大将格の小僧がジーンズの左ポケットをごそごそしはじめた。
おっ?この小僧もしかしてナイフでも出すんじゃねえの?
俺もついにナイフ強盗に襲われる日が来たか!!
とちょい身構えようとすると、案の定すごんできた。
「 なんでだ? じゃねえだろ。 こいつが目に入らねえのか? 」
と、大将格は何の工夫もなくナイフを取り出し、折りたたみの刃を広げ目の前にちらつかせてきた。
だが・・・・
その広げたナイフの刃渡りのあまりの小ささに、初めてナイフ強盗に襲われた俺も無償にムカッ腹が立ってきた。
刃渡りが小指ほどしかねえ・・・・
なんだ? そのナイフ?? お前、人をナメんのもいい加減にしろよ!!
仲間の前だからって調子に乗ってんじゃねえぞ。
と、そいつのナイフを奪いに飛びかかると大将格は半歩後ろに飛びのいた。
1分もしないうちに3人の仲間がそいつにナイフはやばいよ!と止めに入り、あっという間に大将格はナイフをしまう。
しかも間髪入れず握手を求めてきた。
「 どこの国から来た? そのサングラスはいくらだった? 」
「 なんだお前は? 99ルピーだよ、自分で買え。 」
「 どこで買ったんだ? 」
「 コルカタだよ。 買いに行けよ、コルカタまで。 」
「 分かったよ。 じゃあな! よし、行こうぜ。 」
と、仲間を引き連れその場から去ってった。
こ、このひげも生えてねえクソガキが調子に乗りやっがって!!
なんだ? このカルナータカって州は!?
何がいち早く工業化に成功しただよ、なにが最近まで優秀なマハラジャがいただよ。
クソ野郎とゴミしかねえじゃねえか。
全くクソおもしろくねーとこだな、飯はまずいしよ。
宿は汚ねぇーくせに高ぇーとこばっかだしよ。
シヴァよ 俺に広い心を与えておくれ
なんかこいつも 気に喰わなくなった
だれかこのカルナータカ州が好きだって奴がいたら教えてくれ、とりあえず殴るから。
さっさと次の街に行こ、次。 んじゃね!
来週も お楽しみにね!! チュチュッ!
From Naokys!
※2009年5月20日から2009年10月22日までの五カ月間にわたった抱腹絶倒な大天竺一周の旅、あの名作【 インド道 】シリーズがリメイクされ、ナオキーズ!旅ブログ 『 ぶらっと、旅る。 』にて蘇る。
毎週木曜日配信中!!! 一遍たりとも見逃すな。
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