「 カルチュアル・トライアングル③ 」
「 さ~て、ポロンナルワの遺跡巡りも終わったし、おっちゃん、ダンブッラ行きのバスターミナルまでいっちょトゥクトゥクで行っちゃってくれい!」
「 いや、ちょっと待て。俺から良い提案があるんだがちょっと聞いてくれないか。」
「 なんだ? ポロンナルワの遺跡巡りしてバスターミナルまで連れてく約束で2000ルピーって話だったろ? どーせロクでもねぇ提案だろうから、さっさと行っちゃってくれい。」
「 いやいやそーじゃないんだ。 お前は今夜ダンブッラに泊まって明日の午前中に石窟寺院行って、そっからまたバスに乗ってシーギリヤロックに行くんだろ? それよりも今からシーギリヤに行ってまずは今日の夕方にピドゥランガラっていうシーギリヤロックの近くにある岩山に登るんだ。そこから見る夕陽は格別だぞ! で、明日の午前中の涼しいうちにシーギリヤロックに登るんだ。ダンブッラの石窟寺院は洞窟みたいなもんだから午後からでも問題はない。」
(うん。確かにもう日中のクソみたいに熱くて暑い遺跡巡りはこりごりだ。シーギリヤロックなんて遮るものがない岩山の頂上の城跡だしな。それは魅力的な提案だな。予定変更するか)
「 よし、だったらどっちにしろダンブッラからシーギリヤ行きのバスが出てるんだから、この街のダンブッラ行きのバスターミナルへGOだ!」
「 だから俺の話をもうちょっと聞け。いまからバスターミナル行ったってダンブッラ行きのバスが何時に出るか分からないし、そこからさらにシーギリヤ行きのバスに乗り換えなきゃならないぞ。シーギリヤに着いたらホテルも探すんだろ?早くてもいまから3時間以上はかかるぞ。 俺のトゥクトゥクでこのままシーギリヤまで行けば1時間半くらいで到着だ。ポロンナルワ観光代も含めて5000ルピーでどうだ!?」
「 ・・・・5、5000ルピーだと おい、ふざんけんな! 高すぎるわ!! 3000ルピーにしろ。 3000ルピーなら考えてやらんでもない!」
「 冗談言っちゃいけねーよ だったら4500ルピーでどうだ? 時間短縮にもなるし、お前はその重たい荷物をいちいち運ばなくても済むんだぞ!」
(ムムム…… 確かにそれは一理ある。早朝からバスで3時間かけてココまで来てさらに炎天下での遺跡巡りに3時間。かなり疲れとる。これからバスターミナル行ってダンブッラまで行くだろ。さらにバスを乗り換えてシーギリヤ。そこで今度は宿探しってのは面倒くさいことこのうえない。だけど4500ルピーは高すぎる。バスなら100ルピーもしねぇだろうから、プラス2500ルピーも出す価値あるんか? …もうちょい値切るか。。。)
「 アホか! バスならクソ安いしプラス2500ルピーなんて法外だろ! せめて全部で4000ルピーにしろ。おっちゃんの提案は良い提案だけど値段が高すぎるわ。」
「 だけどお前はあと1時間半後にはシーギリヤに着くことが出来るんだぞ。俺のトゥクトゥクにこのまま乗ってるだけでだ。 よし、じゃあ分かった。4000ルピーとは言わないけどシーギリヤに着いたらその時のお前の気持ちで判断して払ってくれればイイよ! どうだ?」
「 あのなぁ、そんなん言われたらシーギリヤで4500ルピーきっちり払っちゃうに決まってるだろうがぁ。俺は律儀な日本人だぞ!」
(なんなんだこのおっちゃんの余裕は。どーせぼったくりプライスなのに完全に足元みられてんのな。でもこのまま快適なトゥクトゥクに乗ってれば良いだけってのは確かに時間短縮にもなるし、かなりそそられる。。。 でも、なんか悔しい。 そうだ!ここは必殺スリランカルピーを日本円に換算作戦だ! この際、バスの値段などどーでもいい。ポロンナルワ観光が1400円。シーギリヤまでのタクシー代がプラス1400円として、あとの500ルピーが350円か。)
「 おっちゃん、あんたには負けたよ。 ただし!! このままシーギリヤまで行ってもらって4000ルピー。で、おっちゃんの知ってるところでいーから宿探しにも付き合ってもらうぞ! その代わりチップとしておっちゃんに500ルピー渡すってことでどーだ?」
「 オーケー、オーケー!! 商談成立、乗りなよ。 シーギリヤへ向けて出発だ!」
と、いう結果に至ったが、なんか言い値そのまんまだと悔しいし、自分を納得させるためにはこの方法しかなかったのな。
でもある意味『損して得取れ』『時間は金で買える』ということで、バス探しも、待ち時間も、乗り換えも、宿探しも無しとなると、かなり気が楽になったよ。
途中でおっちゃんが、「 おい、腹減ってないか? どっかで昼メシ喰ってくか?」って聞くもんだからOKしたら、どう見ても観光客向けの立派なレストランに入ろうとしたよ。だから、「 こういう所じゃなくてさぁ、もっとおっちゃん達が普段から行ってるようなローカルなメシが喰いたいんだよ、俺は。」となって、案内された地元の食堂が大当たりだった。
美味くて腹いっぱいでこの食堂に案内してくれただけでもチップを払う価値があったが、さらにこの先の道中でとっても素敵な出来事に遭遇した。
ポロンナルワからシーギリヤへ行くまでの幹線道路は2つの国立自然公園の中を走って行くんだけど、そこはジープサファリが頻繁に行われてる野生動物の宝庫で、特にミンネリヤ国立公園内の巨大な水場にはたくさんの象が集まってくるんだと。おっちゃんも象を見たことがあるって言ってたし、象に注意!の看板も道路っ端に建ってるくらいだ。
ただ、奴らも日中の暑い時間帯は日陰で過ごしてるもんだから、早朝とか夕方しか水場には集まってこないとのこと。
それでも、象じゃないにしてもなにかしら野生動物がいるかもって期待しながらトゥクトゥクから目を凝らしてたけど、国立公園内での野獣との遭遇は果たせず、そのまま一般道へ抜けちゃった。
さすがにそう簡単に見つけられるものじゃなかったな。当然か。
と。。。
道中、数台の車が道路脇に停まってるのが見えた。と思ったら、
「 おいおいおいおい。 あれを見てみろ! あの右手の山の中だ!!!」
おっちゃんがコーフン気味に叫んでトゥクトゥクを停める。
「 えーーーーー! うそだろ? マジで? こんな事あるのーーーー!?」
偶然にも子連れの3頭の野生の象を見る事が出来たのもおっちゃんのおかげだよ! これがバスだったら素通りしちゃっただろうし、気が付いても一瞬の出来事だろうからな。
それが写真やら動画やらまで撮れる間近での生ライブだろ? おっちゃんですら興奮してたもん。
「 おい、見たか!? 象まで2,30mくらいの距離だったな! こんな事は滅多にないことだぞ! どーだ、トゥクトゥクにして正解だったろ? 」
「 おっちゃん、ありがとうやで! まさか本当に象さんと会えるなんて・・・・ 絶対不可能だと思ってたよ、象さんを見ることなんて無理だと思ってたよ!」
2人は、固い握手を交わしてた。
俺の選択は間違ってなかったのな。ポロンナルワで金銭ケチってバス旅にしてたらこの光景は見れなかったことだし、そもそもおっちゃんの提案がなかったらこうはなってなかった。
おっちゃんに出会ったことがすでにラッキーだった。そして幸運を呼び込んでくれた旅の神様にもありがとうだ。
その後のシーギリヤまでの道のりも、2人でコーフンしながらの道中だった。
「 おい、そろそろシーギリヤだぞ。 見えるか? あれがライオンロック(シーギリヤ・ロック)だ。 で、その手前に見えてる岩山がピドゥランガラだ。」
シーギリヤはこの世界遺産・シーギリヤ・ロックありきの小さな村だ。スリランカ旅行と言ったらこのシーギリヤ・ロックの頂上にかつて存在した城の跡を観に行くこととイコールでもあるくらい有名な観光地。なので、ツーリスティックな安宿やホテル、レストランが建ち並んでいる。
おっちゃんの知り合いのオーナーが経営してる宿に連れてってくれたのはいいんだが、いかんせんシーギリヤ・ロックまでが遠い。さらにその裏手にあるピドゥランガラの岩山ももちろん遠い。
だけど、部屋からの眺めは最高で、宿もすごいキレイでお安い。おまけにレンタサイクルもあるってんで、おっちゃんにありがとうと別れを告げ、チェックインとなった。
さっそくおっちゃんオススメのピドゥランガラの岩山へ登って夕陽鑑賞だ!とチャリで出発。この宿からメインストリートに出るまで舗装されてない1本道を進む。道の両脇には民家や安宿が並んでるんだけど、そのかたわらにはそれぞれのナワバリを持つ犬がいて目の前をチャリで走るたびに吠えて威嚇してくる。当然、全犬野放しである。
(まだ明るいうちからこんなに吠えてくるってーことはだ。夜にはさらに狂暴になる可能性が高いな このチャリ、ライト付いてないし、帰りは絶対暗くなってるし、俺のヘッドライトの灯りだけでなんとかなるかしらん? 追われたら逃げ切れるかな・・・・)
海外の犬ってのは昼間は寝てばっかりでなんにも怖いことなんかないのに、夜になると急に活発になってやる気がみなぎってくる。ナワバリに侵入するヤツには噛みつく気満々なのだ。しかも100%噛まれたら狂犬病になるような風貌の輩が多いから注意しておくに越したことはない。
そんな帰りの心配事もありながらも、気分はウキウキでシーギリヤの村をぐるっと回って3,40分くらいでピドゥランガラの麓に着いた。そこにはピドゥランガラ寺院があって、岩山全体が神域になってる日本の神社みたいなところだった。
軽い気持ちで来たはイイけど、麓から頂上に出るまでがちょっとした登山だよ。
最初はなんとなく階段があったけど、中腹からは道がなく岩をクライミングして登ってく感じ。夕陽目的に頂上を目指すツーリストが多かったからなんとなく道筋が分かるけど、誰もいなかったら辿り着けないようなルートだったぞ。
でも、めっさ楽しい山登りじゃん
夕陽が沈んだ直後に下山を開始した。だって、暗くなったら灯りもない大岩を降りてかなきゃなんねえし下手すりゃケガは確実だからな。
案の定、空を見上げれば夕焼け空でオレンジがキレイだけど、足元は暗くて目がショボショボする。
無事に麓のピドゥランガラ寺院まで下りきった時には完全に夜になっとったよ。
さて宿に戻るんだが、帰り道はもう真っ暗じゃん 頼りは俺の頭で弱々しく光ってるヘッドライトと時たま通りすぎるトゥクトゥクのライトの灯りのみだ。
周りはジャングルだし、こんなときに象がサイドから突っ込んで来たら死んじゃうわよ。
でも、一番恐怖だったのは野生動物じゃなくって、行きに警戒してたお犬さんだった・・・・
宿までの1本道、チャリでナワバリを通過するたびに近寄ってきて吠え散らかす。なかでも最大の敵は昼間一番しつこく吠え続けてた犬畜生だ。
「わんわんわんわんわんわんわんわんわん」
(うおっ こいつ昼間のしつこいヤツ! めっちゃ吠えながらこっちに走ってくるぞ!! 捕まったら噛まれる! マズイ、一刻も早くこいつのナワバリを抜けなければ!!)
弱々しいヘッドライトを頼りに足場の悪い砂道を立ち漕ぎで猛ダッシュ!転んだらアウトだ。
「 ワンワンワンワンワンワンワンワンワンッ 」
(ひぃぃぃぃ なにコイツ敵意丸出し 超追っかけてくるんですけど)
死ぬ気でペダルを漕いだ。それでもすぐ横まで追いかけてきた犬畜生。
ヤツのナワバリは抜けたのか少し吠え声が離れてった。が、バトンタッチでもしたかのように次のナワバリの犬が吠え立てる・・・・
「 わんわんわんわんわんわんわんわんわんわん(侵入者がそっちに行ったぞー!) 」
「 わんわんわんわんわんわんわんわんわんわん(オッケー、こっちに任せろワンワン!) 」
バトンタッチされたヤツは吠えるだけで追っては来なかったが、なんなんだこの道は!!
なんとか噛まれることなく無事に宿に戻れたけど、明日もまた暗くなってこの道通ったら同じ目に遭うのかよ!? おいそれと夜ご飯も喰いに行けねーじゃねーか
まったく本当に色んなことが巻き起こった今旅イチ濃い1日だった。
Sigiriya,Sri Lanka 13/sep/2018 From Naokys!
あの忘れられた名旅ブログ ナオキーズ! 『 ぶらっと、旅る。 』
2018年早秋、ナオキーズ!俺旅の目的地は激辛と噂の仏教アイランド・スリランカ。
『スリランカピリ辛仏教巡り』の旅に乞うご期待!!
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