「 スクリーミング・フェズ・エル・バリ 」
そのバスは、どこまでも続くびっくりするほどなだらかな丘陵地帯をただひたすらに走り抜ける。 丘には細々と低木が生えてはいるがその地表は目に余り土色の景観。 乾燥した広大な荒地は人の手によって耕され、こんな土地にも作物が育つのかと感心するくらいだ。
モロッコは国自体がマッドマックスの舞台のような黄茶けた大地が途方もなく広がっており、街と街はそれぞれ独立して建設され、日本のようにどこに行く途中でも常に人が住んでいる、家が建ち並ぶという景色は見られない。
ひとつの街を離れると都市間をつなぐ幹線道路1本のみとなり、周りの景色は何もない大地の海だ。 遠くかすかに土壁レンガ造りの住居がひしめいて現れてきたと思ったら、そこにはその集落の規模によって村だったり町だったり、街だったりが出現する。
おそらくそこには「水」というキーワードの元に人が住み始め、その「水」が許容する範囲で住民の数や街の規模が確定するのだろう。
それこそが、いわゆる「オアシス」というものなのだと実感する。
女に馬乗り、、、いや、馬に女乗り
途切れる事ない大地のゆるいアップダウン
こんなに耕した人 がんばったね
干上がった川のあとは大小いくつも存在
耕すのも一苦労なら 収穫するのも一苦労そう
街は荒野の中から突然現われる
時折り河が干上がり残ったとこが湖みたいになっとる
行き交う車も ぽつぽつだ
まだ低木も生えそろっていた丘陵地帯も徐々に土や岩が多くなってきて、車窓の風景は地中海性気候から乾燥した高原へと変化してきた。
シャウエンを出発してからおよそ4時間ほどバスに揺られていると、乾いた丘陵の向こう側にこれまで見たことないくらいな規模の住居群が大きな一つの街として目の前に出現した。
そしてその街はぐんぐんと近づき飲み込まれるように街中へ侵入すると、それまでの大自然の静の世界から人の息づく熱気ある動の世界へと変化していった。 それこそ文字通り空気が一変したのだ。
この街こそが、モロッコ最初のイスラム王朝の都であり1000年以上も前に建設されたキング・オブ・古都、大迷宮都市フェズであった。
バスターミナルに到着した俺はタクシーでメディナへ行こうと何台かに声を掛けるが、どいつもこいつも乗せてくれない。 皆、一様に「歩け」の1点張り。 なるほど、バスターミナルから目と鼻の先には巨大な城壁が端が見えないほど左右に続いており、その城壁の中こそが目指すメディナなのである。
歩くとすぐに大きな門が城壁の間に出てきてさっそく城内へ侵入すると、なんというかもうそれはどこぞのテーマパークの様な雰囲気でチケット買わないで入っちゃったけど大丈夫なのかな?って勘ぐってしまうほどの異世界感。
メディナにすぐ辿り着いたはいいけど、目指す安宿はさらにそこから2、30分は歩かなきゃならないほどの距離があった。
青空市が開かれているだだっ広い大きな広場を抜け、オアシスを謳歌しただだっ広いブー・ジュルード庭園の脇を抜け、一つの門をくぐると立派な建物が見えたらそれは王宮だ。 知らずに王宮の写真を撮ると即座にアーミーとガードマンに呼び止められ、「今撮った写真は消しなさい」とたしなめられたので、データを見せながら消去した。
その後は女性ものの衣類が並ぶ屋台のスークを抜けようやく宿に到着。 しかし、シングルは夜の7時にならないと空かないと言われたのでロビーに荷物を預けフェズのメディナ巡りへとそっそく繰り出した。
新市街に多いラウンドアバウト
城壁への入場ゲート 塀が高くてやる気を感じる
1歩入るとそこは夢の国のような気分
乗るのには勇気がいるアトラクション
無駄に広すぎる広場 歩くのしんどい
安宿はあくまで 安い宿だ
身軽になればどこまでも歩ける。
今やって来た道をさかのぼりメディナの入り口ともいえるブー・ジュルード門までわくわくしながら進む。 その門はただの城壁の門とは一線を画し、可愛らしい青系のタイルで幾何学模様に装飾され、門の間から旧市街を除くと目の前にはスークが、その奥には2塔のモスクのミナレットがそびえるのだ。 あぁ、早く突入して迷子に浸りたい。。。
これまでのモロッコ探訪とは違いお店がたくさん開いている! これはやっと市場の活気って奴を体感できるのでは?とひやかしながらのスーク巡りだ。
しかし、売り物は観光客用のお土産関係が多数でキッチュでポップなモロッコ雑貨が有り余る。 それはそれでテンションも上がっていたのだが、奥へ進むにつれて段々とお店の数は減り、まだ犠牲祭の影響ガッツリな休日状態だった。
それでも外国人観光客は多くいるので閑散としている訳ではなかった。 1本道を突き進んで帰りは並行している隣の道で帰ろうと思っていたのに、気がついたらまるで自分の歩いている位置が分からない。 帰り道どころか方向感覚も狂っているので今、この道はどこへ向かっているのか全く想像がつかず、案の定、その辺にいる現地人に聞いてもあっちだとかこっちだとか言われさらによく分からなくなっていた。
めちゃくちゃ楽しいじゃないか。 この迷路のようなメディナの街の作りは敵が入り込んでも迷うように設計されていると言うが、地元の子供なんか絶対に迷子になって泣いたことのあるやつは大勢いるだろう。
それでもなんとかスタート地点のブー・ジュルード門まで帰ってこれたが、いきなり見たことある景色に出くわしたので、あぁ、ここかぁ。てな具合だった。
ブー・ジョルード門 定番の撮影スポット
あとあと気付いたツーリスティックなスーク入口付近
アートも路上販売してる
革製品も有名でなめして色付けた小物が多数
日本でミントティー飲むならこれ買って使いたい
壁が崩れないように支えてるけど ほんと頼りない…
気が付けばまだ休日だった・・・・ 歩きやすいってことで納得。。。
たまに開いてる店も なんかいいやって思った
タンネリと呼ばれるなめし革職人の仕事場
宿に戻り無事にチェックインを済ませる。 ここで2人の日本人旅行者と出会い夜飯を喰いに行こうとなるが、言わずもがな犠牲祭の休日の影響か、元々この辺りにご飯屋さんが無いのかは分からないが全然メシ喰えるところが見つからない。
このままメディナの方まで行くか?でも遠いし帰りかったるいよな、などと話しながらとりあえず歩き続けると庭園の端のあたりに1軒のカフェ発見。 そこでなんとかパニーニとオレンジジュースの食事を摂ることができた。 あぁ、よかった。。。
次の日は朝から大学生のY君と夜行便のバスチケットを買いに新市街にあるフェズ駅の近くまで出向いた。 スープラトゥールという大手のバス会社がありそこの営業所が駅の近くにあるのだ。
ユダヤ人街を通り、王宮の正門前に出た。 さすが王宮の前ともなると貴重であろう水をふんだんに使用する噴水なるものがピューピュー出ていた。 日本じゃなんてことないが、モロッコに来て7日目、乾燥が当たり前になってきた身としては、王様の権力すごい・・・・ と、平伏せざるを得なかった。
フェズの次に向かう場所はいよいよサハラ砂漠のベースキャンプとも言えるメルズーガ。 無事にメルズーガ行きの夜行便も入手し宿に戻る。 ここの宿のオーナーはとても親切で英語の通じにくいモロッコにおいても希少な英語の達者な人なので、俺のようなブロークンイングリッシュも理解してくれる。 そして、メルズーガの宿を電話予約してくれるとのことなのだ。 これはとてもありがたいことだった。
さて、夜の7時くらいまで今日はまたフェズ探索をするのだが、宿の前のカフェでミントティを頂きながら一服していると、見た目日本人で日本語も流暢な韓国人・ロッキーと出会った。 彼としばし歓談をしているとどうやら夜まで宿のシングル部屋が空かないから待っているとのこと。 おっ?どっかで聞いたことのあるシチュエーションじゃあないかと思ったが、昨日俺がこの宿に来た時と同じ状況ではないか。
実は昨日俺が夜の7時までシングルの部屋が空くのを待っていたのは、泊まっていた旅行者が夜行便のバスで砂漠へ行くのでそれまで部屋を借りていたからなのだ。 そして今日は俺が夜行便のバスで砂漠へと旅立つので部屋を夜まで借りていた。 要するに俺の出発待ちだったのである。
それじゃあ時間までフェズ探索を一緒にしようという事になり、フェズの街を一望できるという小高い丘の上のマリーン朝の墓地の遺跡まで2人で行った。
そこは最高のビューポイントで吹く風は心地良く、大きくて広くて雑多なフェズのメディナをワイドで眺めることが出来た。 遠くから見てもこの街を、旧市街の中を迷うことなく歩き回るのなんて不可能でしかないと悟れたよ。
メディナまで戻った2人はスークを歩き、迷い、疲れ、堪能し、迷った。 本当にこの旧市街迷子ツアーはどこの街でも楽しめるが、ここフェズにおいては上級者コースとも言えるものだった。 もし犠牲祭の休日が無く全店開業中の活気さながらなメディナを歩くことが出来たなら、それはもの凄いエネルギーを消費しそうだが、その分、倍の活力を得ることが出来るだろう。
王宮正門前にツアー客が来たら撮影のチャンス ここでは怒られない
後にも先にもこんな大量の水の無駄使いを見ることはなかった
ユダヤ人街も御多分に漏れず休日だ 開いてるのはカフェだけ
実は世界遺産だった丘の上の墓地遺跡
この街をこの城壁が取り囲んでる 千年の歴史はきっと濃い
正面にみて左側(旧市街 フェズ・エル・バリ)
正面にみて真ん中(旧市街 フェズ・エル・バリ)
正面にみて右側(旧市街 フェズ・エル・バリ)
これでもお店は開いてきた方と思う
果物と野菜のスーク 新鮮かどうかは運次第
ミックスナッツにハズレなし
午後7時になり、大学生のY君とバックパックを背負いスープラトゥーンのバス乗り場まで歩く。
このバス会社のバスは最新鋭の車体で快適なので夜行バスだろうとなにも心配はいらない。 クーラーが寒いかどうかの心配くらいだ。 これまでモロッコで乗ってきたバスとは一味違うのだ。
フェズのメディナ探訪も終え、この旅のメインと位置付けてたサハラ砂漠へ向けて暗くなった荒野へ走り出し、歴史ある古都をあとにした。
Fes,Morocco 15~16/sep/2016 From Naokys!
あの忘れられた名旅ブログ ナオキーズ! 『 ぶらっと、旅る。 』 2016最新作 「モロッコを駆け抜けろ!」 2016/9/9から2016/9/25までの旅先はアフリカ北西部に位置するモロッコ王国。
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